遺留分について
遺留分とは、一定の相続人に対して、その生活の安定や相続人同士の公平性の確保のために、被相続人の相続財産の一定割合の承継を保障している制度です。
遺留分の割合は下記の通り定められています(民法1028条)。
1.相続人が直系尊属のみ 相続財産の3分の1
2.それ以外(相続人が配偶者と子や子のみである場合等) 相続財産の2分の1
上記を総体的遺留分といい、上記割合に個々の相続人の法定相続分を乗じた割合を個別的遺留分といいます。相続人が配偶者と子2人である場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子の法定相続分は各々4分の1ですので、この場合の個別的遺留分は配偶者が4分の1、子が8分の1となります。なお、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺贈や生前贈与によって遺留分を侵害された相続人は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び一定の範囲の贈与の減殺を請求することができ(民法1031条)、この権利を遺留分減殺請求権といいます。遺留分減殺請求を受けた場合、受贈者等は現物を返還するのが原則ですが、減殺を受けるべき限度において、価額を弁償して返還義務を免れることができます(民法1041条)。居住用不動産や自社株式等のように共有となることが望ましくない財産に対して減殺請求を受けた場合は、価額弁償を選択した方が良いかもしれません。
なお、遺留分減殺請求は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき若しくは相続開始から10年を経過したときは行使することができなくなります(民法1042条)。また、遺留分は、相続開始前に家庭裁判所の許可を得ることで放棄することができる他(民法1043条)、事業承継を検討されている方であれば、経営承継円滑化法の規定を満たすことでその自社株式等を遺留分の算定から除外する等の特例を受けることができます。
以上のような制度が日本の民法においては認められているため、遺留分を大きく侵害する形で遺贈や生前贈与を行ってしまうと相続発生後に相続人同士の争いに発展する可能性もあります。財産を承継させるにあたり遺贈や生前贈与をなさる際には、当該財産が自身の財産のうちどの程度の割合を占めているのか一度検討し、不安があれば司法書士や弁護士等の専門家に相談してみると良いでしょう。